| 『税理士が私的整理に関与する場合の税務チェックポイント』
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| 税理士 載本 高広 |
1.はじめに
負債額30億円以上の大型倒産が日々報道され、デフレスパイラルによる個人消費の停滞・沈滞ムードが依然深刻な状況のなか、一般中小企業においても収益悪化、金融機関再編に伴う資金援助縮減・撤退、連鎖倒産などさまざまな不安にさらされている。一部企業経営者は具体的経営戦略すら出せず立ち往生しているにもかかわらず、「不況」というものに慣れ、それに甘んじているようにも見受けられる。
日本経済は高度成長期において奇跡的な復興と世界的地位を確立した。しかし一方企業として昨今の時代環境変化に順応しきれず役割を終えつつある事業種があるのも確かだ。税理士としても今後相談や実際に整理清算業務に携わる機会が今以上に増加するものと思われる。
そこで、本稿では会社整理という広範な単元のなかから、特に消滅前提法人の私的整理(内整理)における税理士としての実務スキームと留意点について述べることにする。
2.法的整理と私的整理
最初に基本的な整理の種類を大まかに述べる。
1)法的整理
一般的に「法的整理」と呼ばれるものには「会社更生」「民事再生」「商法上の会社整理」の3つがあり、「破産」「特別清算」の2つがある。いずれも裁判所の関与のもとにその法律の制約を受ける。個々において適用可能な企業(個人・法人)が限定されるため注意したい。「会社更生」及び「破産」の場合、会社の管理者は管財人に移行するのに対し、「民事再生」「商法上の会社整理」は原則として経営者(代表者)はその地位にとどまることが可能である。
2)私的整理
「私的整理」は実体法規が存在せず、法律的な構成は企業と個々の債権者との和解契約となる。「法的整理」とは異なり整理途中で法的整理に移行する場合を除いて裁判所の関与のもとに行われることもなく、債務者たる企業と債権者の主導による。
3)相違点
法的整理は裁判所の監督のもと、公正かつ公平な整理が保証されている反面手続に長期間かかる点において迅速性に欠ける。財産処分においても順序や方法に厳密な規制があり低価処分となりがちだ。
それに対し私的整理はその簡易性、迅速性、融通性などにおいて長所を有すろ。また、利害関係者に迷惑をかけないという大前提があるため、一旦事業を廃止し債権債務整理後、新規設立により再び事業を開始することが容易となる。このように債権者、債務者双方にとって有利になることもあるが反面、個別和解契約であるという点が任意性、非拘束性、不平等的取扱の許容という欠点ともなることに留意する必要がある。
3.私的整理による処理スキームのポイント
ここでは税理士として押さえておきたいポイントを列挙する。よって登記その他の手続は商法、民法等関連法規を参照されたい。
1)代表者の決断
会社の私的整理はまず代表者(社長)が決断することから始まる。このタイミングは法的整理に委ねることなく私的整理を完結させるのに最も重要である。企業を「見限る」ことは到底容易ではない。だが大抵の経営者は自社の置かれている環境や今後の成長性、保有財産の担保価値と有利子負債のバランスは十分承知している。税理士は顧問先企業の財政状況分析という点で経営者への適切なアドバイスが求められるところだ。
2)解散前に検討しておくべき事項
(1)所有財産換金価値の見込み算定
私的整理において最も重要な要素であり金額の変動、変更は重大な影響を及ぼす。
特に棚卸資産や土地以外の固定資産については内外専門家の判断を要するところだ。また、会社が粉飾決算していたかどうか(棚卸資産、売掛金など)も必ずチェックする。
(2)簿外負債の確認
会計帳簿における負債(買掛債務、金融機関債務等)以外の簿外負債の確認も大変重要である。他社の連帯債務の有無を筆頭に手形割引高及び手形裏書高のほかリース債務も確認する必要がある。手形割引や裏書に関する偶発債務については手形期日まで消滅しないし、リース債務は通常、会社が解散した日をもって残存債務を全額即時弁済するという契約になっているため注意が必要だ。
(3)労働債務の確認
実務としては役員退職金より従業員退職金を優先する必要がある。社内規定で算定された従業員退職金のほか適格退職年金の積立額も要チェックだ。
また会社に労働組合がある場合、協定が当然あるために理事長及び理事との交渉が別途生じる。これらは必要に応じて弁護士へ依頼する。
(4)完全消滅か新設法人に営業譲渡するかの判断
代表者(経営者)によっては新設法人を設立して当該法人へ営業譲渡を望む場合がある。この場合法的手続を踏むのはもちろんであるが内外専門家の判断のもと営業権や特許権の算定、棚卸資産及び固定資産の評価額の見積が必要となる。
なお、特許権を新設法人へ売却する(無償も含めて)場合には清算結了日まで(清算法人が現存している間まで)に名義変更すれば移行は可能である。
(5)残余財産シミュレート及びスケジュール作成
上記(1)〜(3)に基づき残余財産のシミュレートが必要になる。税理士としては代表者とよく話し合った上で数字に置き換えるという細心の注意を要するところである。この場合清算結了までに要する諸経費の見積も加味する。(清算人報酬、従業員給与その他事務手数料のほか固定資産税等の租税まで。)これは私的整理完了(清算結了)における重要な指針として解散後も常時メンテナンスすることが必要だ。また株主が多い会社は法的に強制されるものではないが、残余財産分配予定額として解散決議時点にあらかじめ明示しておくこともスムーズな解散決議のために重要である。なお、含み資産がある場合売却メドが立ってから後に解散決議日を設定することが望ましい。
(6)株主の権利
会社の解散において株主の権利は原則として変動することはない。解散後においても保有株を第三者へ売買することもできる。(譲渡制限株式の場合を除く。)
ただし営業譲渡、譲受又は合併などの株主総会決議において反対した場合の会社への持株買取請求権は解散の場合にはない。(商法245条の2)よって一部解散決議に反対した者からの買取はできず、株主平等の原則のもと清算結了にいたるまで払い戻しはできないこととなる。(一部残余財産分配があった場合を除く。)反対していない株主ももちろんのこと一部の者に優先的に払い戻しはできない。「持ち合い株式」も同様で注意が必要である。
3)解散決議
私的整理の場合も含め、会社は通常株主総会の特別決議をもって解散する。解散後の会社は合併の場合を除き直ちに法人格が消滅するものではないので解散前の会社の法律関係は原則変更を受けないが、会社の事業の範囲は清算の目的の範囲内に限定される。よって業務執行担当取締役、代表取締役は退任し、代わりに清算手続を担当する清算人、清算人会、代表清算人が選任される。監査役は引き続き存続しても良いし新たに選任してもよい。
4)財産換価手続及び債務弁済
解散後営業はストップし整理業務に入る。当然のことながら所有財産及び債権はすべて換金、取立し、労働債務や対外債務はすべて弁済する。
5)清算結了総会及び残余財産分配
すべての整理業務が終了した時点で清算人は決算報告書を作成し、株主総会へ提出してその承認を求める必要がある。またこの時点で残余財産は確定し分配する。なお、解散会社の帳簿、営業及び清算に関係がある重要書類は清算結了登記後10年間裁判所が選任した書類保存者が保存しなければならない。(商法429)4.私的整理の際の税務上留意点
ここでは解散日から清算結了にいたるまでの税務上取扱を事業年度ごとに述べる。
1)解散事業年度
(1)解散日
会社整理において解散決議イコール解散日をいつにするかは税務において細心の注意を払う必要がある。事業年度開始の日から解散日までは一事業年度とみなされ通常事業年度と同じ所得金額計算を行うため、前述の通り、含み資産がある場合その処分が解散日までに行われると通常の益金処理(損益法)によることになる。
(2)届出及び申告
会社が解散した場合には遅滞なくその旨を届け出なければならない。通常届出に際し解散登記後の登記簿謄本及び解散決議株主総会議事録を添付する。
申告はその事業年度開始の日から解散の日までを一事業年度とみなして、当該期間に係る「解散確定申告書」を解散の日から2月以内に提出し、申告税額を納付しなければならない。
当該事業年度の所得計算等は、それまでの各事業年度の所得計算等と基本的には変わらないのが原則である。(以下の特例を除く。)
(3)減価償却
法人の事業年度が1年に満たない場合においては、減価償却の償却率は改訂償却率によることとなる。(耐用年数省令第4条第2項)
(4)特別税額控除及び減価償却の特例
以下の法人税法の特例は適用できない。(清算中の各事業年度を含む。)
・試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除(措置法第42条の4)
・エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の5)
・電子機器利用推進設備を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の6)
・事業基盤強化設備を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の7)
・事業化設備等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の8)
・自由貿易地域等において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(措置法第42条の9)
・沖縄の特別中小企業者等が事業化設備等を取得した場合等の法人税額の特別控除(措置法第42条の10)
・製品輸入額が増加した場合の法人税額の特別控除(措置法第42条の11)
・中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の12)
(5)引当金
貸倒引当金、賞与引当金(原則廃止。平成10年4月1日から平成15年3月31日までの間に開始する事業年度においては繰入の経過措置がある。)については通常年度と同じく繰入れが可能である。退職給与引当金については廃止される見込みである。
(6)準備金
特別修繕準備金等租税特別措置法上の準備金については解散事業年度(清算中の各事業年度を含む。)において設定ができず、その解散の日における各種準備金の残高は全額取り崩して益金に算入しなければならない。
(7)圧縮記帳
法人税法及び租税特別措置法上の圧縮記帳の適用は認められているが、国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入(法人税法第43条)等圧縮特別勘定の設定は認められていない。また、これらの特別勘定が計上されている場合には、これらの金額を取り崩して益金に算入しなければならない。
(8)所得の特別控除
技術等海外取引に係る所得の特別控除(措置法第58条)、収用換地等の場合の所得の特別控除(措置法第65条の2)は解散事業年度においても適用が可能である。
(9)退職金
会社が解散した場合には大部分の従業員は退職して退職金を受領するが、一部会社に残留し清算事務に従事するものもある。法人税法上は退職していない従業員に対する退職金は損金に算入しないことが前提であるが、一定の退職金打切り支給に該当する場合、損金算入できる(法人税法基本通達9─2─24)。
また所得税法上は法人が解散した場合において、引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与はその給与計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件のもとに退職手当等とする。(所得税法基本通達30─2)
(10)青色欠損金
青色申告法人には欠損金の繰越控除(法人税法第57条)又は欠損金の繰戻還付の制度(法人税法第81条)が認められている。
これらは解散事業年度においても適用できるが欠損金の繰戻還付は平成4年4月1日から平成14年3月31日(2年間延長の見込み)までに終了する事業年度について原則適用できず(措置法第66条の14)解散等の事実の事実が生じた場合に、その特定の事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度又は同日の属する事業年度の欠損金額をそれらの事業年度開始の日前1年以内に開始する事業年度に繰り戻して法人税額を還付するという特例(法人税法第81条第4項)が認められている。
(11)留保金課税
同族会社における留保金課税は通常事業年度と同じく適用されるが、税率及び1500万円控除の定額基準において月割按分を要するため注意が必要である。(法人税法第67条第3、4項)
(12)税額控除
前述(4)特別税額控除のほか以下の税額控除は適用できる。
・所得税額の控除(法人税法第68条)
・外国税額の控除(法人税法第69条)
・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除(法人税法第70条)
(13)使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例
法人が平成6年4月1日から平成14年3月31日(2年間延長の見込み)までの間に使途秘匿金の支出があった場合には、当該法人に対して通常の法人税に当該使途秘匿金の支出の額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額を加算する。(措置法第62条)
この規定は通常事業年度、解散事業年度及び清算事業年度においても適用があるため注意が必要である。
(14)月割計算留意項目
通常解散事業年度は1年に満たない場合が多いため以下の項目につき注意が必要である。なお、上記B減価償却及びJ留保金課税を除く。
・繰延資産の償却限度額
・交際費の損金算入限度額計算における定額控除限度額
・寄附金の損金算入限度額
・賞与引当金の繰入限度額(原則廃止。)
・中小法人の軽減税率適用金額
・法人住民税均等割額2)清算事業年度予納申告
(1)清算事業年度
清算事業年度は解散日の翌日からその会社の決算日を一事業年度とし、以降毎決算日をもってそれぞれを一事業年度とする。残余財産分配が確定する日までは決算日ごとに清算事業年度予納申告を行う。
(2)所得計算及び申告
会社の清算中に生じた各事業年度の所得については「各事業年度の所得に対する法人税」は課さないこととされているが(法人税法第6条)結果として当該予納申告に関しては、所得金額の計算は原則的に解散前の通常の各事業年度の所得金額等の計算規定が適用される。また清算中の各事業年度(残余財産の確定の日の属する事業年度を除く。)の終了の日から2月以内(当該期間内に残余財産の最後の分配が行われる場合には、その行われる日の前日まで)に清算予納申告書を提出し、申告税額を納付しなければならない(法人税法第102条)。
この場合当該予納申告書にはその事業年度の貸借対照表、損益計算書、勘定科目明細書その他の書類を添付しなければならない。
なお、通常事業年度とは次のB以降において相違があるため注意が必要である。
(3)減価償却及び引当金
減価償却(普通償却)及び前述1)Dの各種引当金は通常どおり設定が可能である。
(4)特別償却及び準備金
前述1)(4)のとおり設定できない。
(5)圧縮記帳
法人税法上の圧縮記帳(法人税法第42条から第51条)、収用等の場合の圧縮記帳(換地処分等の場合の圧縮記帳を除く。)及び所得の特別控除、特定資産の買換えの場合の圧縮記帳の適用はない。
(6)税額控除
以下の税額控除は適用できる。
・所得税額の控除(法人税法第68条)
・外国税額の控除(法人税法第69条)
・残余財産の一部分配に係る予納申告法人税額の控除(法人税法102条第1項第三号)
なお、この税額控除を行う場合には予納申告所得金額に一律30%を乗じた金額とする。
逆に以下の税額控除は適用できない。
・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除(法人税法第70条)
・前述1)(4)の特別控除
(7)税額計算
清算中の各事業年度において解散会社は利益の分配がないため留保金課税の適用はない。また仮想経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除の適用もない。(法人税法第102条第1項第二号)
(8)青色欠損金
清算中の各事業年度においては欠損金の繰戻還付の適用はないが欠損金の繰越控除の適用はある。
(9)申告手続等
清算中の各事業年度においては中間申告を要しない。(法人税法第71条)3)残余財産分配予納申告
(1)所得計算及び申告
会社はその清算中に残余財産の分配をしようとする場合において、その分配をしようとする残余財産の価額がその解散の時における資本等の金額及び利益積立金額(その分配をしようとする時までに生じた利益積立金額を含む。)の合計額(既に残余財産の一部分配をしている場合には、その分配した残余財産の価額を控除した金額。)をこえるときは、残余財産の全部を分配する場合を除き、分配のつど、その分配の日の前日までに、残余財産の一部分配の場合の清算所得の金額を計算して、「残余財産の分配予納申告書」を提出し、申告税額を納付しなければならない。(法人税法第103条)
またこの予納申告書には、
・解散の時及び分配の時における貸借対照表
・残余財産の分配の時における財産目録
・解散の時から分配の時までの清算に関する計算書
を添付しなければならない。(法人税法施行規則第46条)
(2)税額計算
残余財産分配予納申告税額の計算における税率は、清算所得に対する法人税と同様であり、普通法人の場合27.1%(平成11年4月1日以降解散の場合。)である。
前述2)(6)税額控除の税率(30%)と合致しないが、清算中の各事業年度の所得金額に対する法人税率30%であることとの整合性を持たせるためである。4)清算確定申告
(1)所得計算及び申告
会社が解散をした場合における清算所得に対する法人税の課税標準は解散による清算所得の金額とする。(法人税法第92条)
当該清算所得の金額は、その残余財産の価額からその解散の時における資本等の金額と利益積立金額等との合計額を控除した金額とする。(法人税法第93条)
清算中の会社は、その残余財産が確定した場合には、その確定した日の翌日から1月以内(その期間内に残余財産の最後の分配が行われる場合には、その行われる日の前日まで)に「清算確定申告書」を提出し、申告税額を納付しなければならない。(法人税法第104条)また清算結了に伴って速やかに諸税務官庁への届出を要する。
この場合当該清算確定申告書には次の書類を添付しなければならない。
・解散の時及び残余財産の確定の時における貸借対照表
・残余財産確定の時における財産目録
・解散の時から残余財産の確定の時までの清算に関する計算書(同条第2項、法人税法施行規則第48条)
(2)残余財産の価額に算入されるもの
次の金額は残余財産の価額に算入する。
・清算中に納付する法人税(解散事業年度以前の法人税を除く。)
・資産再評価法の規定に基づく再評価税
・都道府県民税及び市町村民税(解散事業年度以前のものを除く。)
・事業税(解散事業年度以前のものを除く。)
事業税は通常事業年度では損金算入されるが、清算所得の計算上残余財産から減額すると、税額計算が循環してしまうために残余財産の価額に加算する一方で税率を27.1%(平成11年4月1日以降解散の場合。)に減じている。
・都道府県民税及び市町村民税、事業税の係る延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金
・清算中に支出した寄付金(清算業務の遂行上通常必要と認められるもの並びに国等に対する寄付金及び指定寄付金を除く。)
・清算中に納付した所得税額
解散会社が清算中に収入した利子等について源泉徴収された所得税額について、清算所得に対する法人税額から控除又は還付を受けようとする場合は、その控除又は還付される金額に相当する金額は清算所得の計算上、残余財産の価額に加算しなければならない。
(3)利益積立金額に算入されるもの
残余財産の価額から控除する解散の時における利益積立金額等とは次の金額の合計額をいう。
・解散の時における利益積立金額
・清算中に内国法人から受けた受取配当等の額(負債利子控除後の金額)で、特定株式等に係るものはその全額、特定株式等以外にかかるものはその80%相当額
・清算中に還付を受けた租税(法人税、都道府県民税及び市町村民税を除く。)及び外国法人税の額
(4)税額控除
清算所得に対する法人税額からは、次の金額が控除される。また控除不足額については還付される。なお当該還付金について還付加算金は付されない。
・清算中に納付した所得税額
・清算事業年度予納申告法人税額
・残余財産分配予納申告法人税額5)その他の留意項目
(1)事業年度変更
整理・清算が1年を超える長期にわたると見込まれる場合と異なり比較的短期清算結了が見込める会社においては必要に応じて事業年度の変更を考慮する必要がある。
例えば解散、清算を考えている3月31日決算法人で、土地などの含み資産売却のメドが2月末日、解散決議日を同年1月末日と想定した場合同年2月1日から3月31日を一事業年度として、前述2)(2)の通り解散前の通常の各事業年度の所得金額等の計算規定が適用される清算事業年度予納申告を同年5月31日までに提出し、申告税額を納税しないといけない。こちらの納税額は最終の清算確定申告計算において税額控除がなされるためトータルとしては同じである。
ただ、通常整理・清算する会社の含み土地には担保設定がなされ売却即債務弁済ということが一般的であり、納税資金に困窮する事態が想定される。そこでこのような場合においては土地等の含み資産目途(今回の設定では2月末日)より以前に決算日を設定するため営業年度を変更する特別決議を行うことを検討する。
これにより約1年間は清算事業年度予納申告の必要がない。
(2)消費税
消費税の申告納税においては通常の事業年度の扱いと同様となる。また課税期間も法人税法上の事業年度と同じである。
(3)清算人等の第二次納税義務
法人が解散した場合において、その法人に課されるべき、又はその法人が納付すべき国税を納付しないで残余財産の分配又は引渡をしたときは、その法人に対し 滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に限り、清算人及び残余財産の分配又は引渡しを受けた者は、その滞納に係る国税につき、第二次納税義務を負う。
ただし、清算人は分配又は引渡をした財産の価額の限度において、残余財産の分配又は引渡しを受けた者はその受けた財産の価額の限度において、それぞれその責に任ずる。(国税徴収法第34条)
よってその会社が解散し清算結了の登記を行い実態的に法人格が消滅した後においても清算人等への第二次納税義務が問われることがあるので注意したい。
(4)保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例
会社を整理清算する上で代表者等がその会社の保証債務履行のために所有財産を売却するケースがある。
所得税法第64条第2項では、その履行に伴って生じたその会社への求償権の全部又は一部が行使できないこととなった場合にその求償権行使不能部分は譲渡所得の金額の計算上なかったものとみなすと規定している。
ここで注意が必要なのは
・その会社が債務超過等既に資力を喪失している状態以降の保証
・債権者から保証人に対して保証債務の履行が請求される前の債務の弁済
にはこの規定は適用されない。
また、会社は整理・清算の上消滅することが前提である。会社が長期にわたって債務超過状態にある場合にも適用は可能であるものの、清算中の状態から会社継続決議に至った場合には求償権行使不能の判定において問題が生ずるものと思われる。5.おわりに
日本国の法人数は約270万社である。周知の通りそのうちの約7割が赤字経営である。全国の税理士約6万人がそのすべての会社に携わっていることはないのだが、多かれ少なかれ個々の税理士は赤字会社にも携わる。
「整理・清算」は一般の税務会計と違って長期間にわたる作業になるしリスクも大きい。さらに税理士報酬も保証されものではない。
事案にあたる場合には、より冷静かつ適格な判断を必要とする。
弁護士や司法書士との連携も不可欠だ。 |